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030.中世の「旅」

 現代は「情報社会」であると共に、「交通社会」でもあります。
 人々はちょっとした暇を見つけては小旅行をしたり、連休を利用して大がかりな旅行をしたり、あるいは車を使って「ちょっと遠出」などという、「旅」を楽しみます。

 現在では「旅」(あるいは旅行)という物は趣味の一つであったり、あるいは心と体のリフレッシュ手段の一つであったりします。
 しかし、現在と中世では事情も異なります。
 今回は、中世における「旅」について、ちょっとした知識などをあげてみようかと思います。

 コラム018(ファンタジー世界での冒険者)でも取り上げたように、中世の人々というのは、成人人口のおよそ9割までが第1次・第2次生産者でした。
 そして、生産者というのは地域に密着した存在であり、農作物などを作る事は1年がかりの仕事ですから、自分の住む地方を離れる事など、考える事もできないのです。

 ですから、ほとんどの人々は「旅」という物をしませんでしたし、それをする者というのは商人の様な交易関係の人間か、あるいは巡礼者の様な余程の理由のある者だけでした。

 しかも、地方をつなぐ街道はほとんど整備などされていませんでしたし、街や村を離れると、そこは無法地帯・危険地帯に他なりませんでした。
 そう、現代と違って、中世での「旅」と言う物は、言葉通りに命懸けの物だったのです。

 逆に、「旅」という物が一般的ではなく、危険だからこそ「旅」をする者もいました。
 それは、交易商人です。
 彼らは情報や物品の交流が少ないという事に注目し、「数の少ない物は高く売れる、数の多い者は安く買える」という原則を利用して、「ある地方で安く買った物を違う地方で高く売る」という、実に商魂逞しい人々でした。
 しかし、「旅」をするという事は様々な危険と遭遇するという可能性の高い物であり、どちらかというとギャンブラー、あるいは山師のような存在だったという事です。

 中世では、「旅」という物の感覚が、現在とはかなり異なったという事がよくわかりますね。

 この感覚は、幻想世界に住むPC達も変わらないのではないでしょうか。

 未熟な冒険者のパーティがはじめての旅を目前にして必要以上に緊張したり、あるいははじめて見る異国の風景に心を奪われる、というシーンなどはとてもリアリティがありますし、そんなちょっとした違いをロールプレイするのも面白いかも知れませんね。


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